足底腱膜炎の痛みの原因は
足底腱膜炎だけではない


臨床家にとって、足底腱膜炎は治りにくく苦労する症例です。

なぜ治りにくいかという理由の一つ、それは痛みの原因が足底腱膜炎のみではないからです。


足裏の痛みへのアプローチをする場合、多くの人は土踏まず付近に触れる、固い腱を刺激すると思います。

この組織は固いので、かなり一生懸命刺激しなければいけません。

手だと刺激が届かないので、ゴルフボールや、木やプラでできたツールを使う人もいます。

私も足底腱膜アプローチ用のツールを持っていて、これがないと仕事が出来ません。


しかし、長時間足底腱膜を刺激し、腱膜が触診上も柔らかくなった事を感じ、手ごたえありだな、これで大丈夫だろうと思って、患者さんへ歩いてみてどうですか、と尋ねたとき

「……ちょっとましだけど、あんまり変わっていない」

と言われてしまいます。あるあるです。


足裏の痛み、足底腱膜の痛みだと認識されている痛みは、実はいくつかの原因によって複合的に起こっていることが多いです。治療が必要な部位を思いつくまま列挙すると


1 足底腱膜

2 腱膜の踵骨付着部(骨棘がある事もあり)

3 長腓骨筋(足底付着部~筋腹)

4 アキレス腱

5 アキレス腱の踵骨付着部

6 ヒラメ筋の下部

7 中足骨間にある骨間筋群


などだと思います。


これらの組織が複合的に損傷もしくは過敏化していて、足裏の痛みを発症しているようです。

新患で足底腱膜炎らしき症状を持った人、病院で診断名として足底腱膜炎と名のついた人が来た場合、最初の触診段階でこれらを全検索する必要があります。

最初に全検索してしまえば、あとはアプローチするだけになり、簡単……


これがまた、そんなにうまい事は行きません。

上記の部位を全検索し、痛みを発しているところを一通り治療した。

症状がましになってきた。もうちょっとで完全回復まで持っていけそう。

ところがここで停滞し、ないなか治らない場合がたくさんあります。


例えば最初の全検索で 1 2 4 5 に圧痛があり、そこを治療したとしましょう。

それらの組織は手ごたえとして柔らかくなり改善がみられるのに、痛みが取れない・治療が進まない場合、なんと

「もう一度全検索」

が必要になります。


治療中に後から痛くなったのか、それとも他の症状がある間に反応がなかったのか、この辺りは判別が出来ないのですが、以前は痛みを発していなかったはずの組織が、治療が進むにつれて圧痛が出てきて、治療対象になるという症例をいくつか見ています。

そのため、治療が停滞した場合は「以前はなかった痛みがないか再度の全検索」が必要になるという事です。


この辺が足底腱膜炎の治療が難しい所以だと思います。


まとめると


A 最初に足底の痛みを作りうる組織を全検索する

B 治療直後に症状が改善すれば方針はOK。しばらくそれで進める。

C 改善が進まなくなってきたらもう一度全検索し、治療対象を変更する


という手順が必要です。何ならB~Cを何度も繰り返すこともあります。


足底の痛みは治療の期間が長くなりがちで、治療に抵抗がある症例ですが、この方針をもってあたれば改善率が相当高くなると思います。